子どもの本は「どうぶつ」、「動物園」、「どうぶつの子ども(赤ちゃん)」が大好き!

2010 年 1 月 5 日 火曜日

第1回で、「どうぶつのこども」と「子どもの本」の関係について、簡単に触れました。今回は、いろんな時代の、特に日本の本の中から、そういう例を探してみましょう。

まずは『どうぶつのえほん』(昭和34年『よいこ』9月号付録、小学舘刊)から。監修者は「上野動物園長古賀忠道」さん。「ペンギン」のページの隅には「おかあさまへ」として、こう解説があります。
「ペンギンは飛ぶことができません。立ってよちよち歩きます。けれども、泳ぐことと、腹ばいで氷の上をすべることはとてもじょうずです。」ちなみに、日の丸の小旗を振っているウサギは、『よいこ』のキャラクターで「しゃっぽちゃん」と「りぼんちゃん」といいます。各国の「南極探検」が盛んだった時代の空気が窺えます。

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次も付録です。『動物グラフ』(四年の学習『進級お祝い号』付録、昭和28年4月号、学習研究社)。上野動物園に取材し、上野のスタッフと東京都内の小学校教諭がまとめた「教材」ですね。なんと、ペンギンとしては、ヒゲペンギンとフンボルトペンギンが紹介されています。
巻末には、次のような「指導のしおり」が…。
「おもしろくて、ためになるようにという考えで、この動物グラフを編集してみました。したがってふつうに、児童が見なれているものははぶき、外国のめずらしいものなどもとりいれてみました。動物を見る時には、形態、生態、生息地などを関連的に考えながら見るように習慣づけたいと思います。分類の方法は、学問上のものではなく、児童の発達心理に応じてあります。」

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次も付録です。『せかいのどうぶつ』(小学二年生五月号付録、昭和32年5月刊、小学舘)の裏表紙。ちなみに表紙はライオンの親子です。
しかし、氷の上のペンギン(たぶんフンボルトペンギン)を描いた図の解説が以下のごとし。
「なんきょくのペンギン」まあ、仕方がないかな?といったところでしょう。ところで、このようなパラパラ開きの小型本は、子どもの本には古くからある、「伝統的形式」の1つ。
例えば、1899年にドイツで出版されたこの小型仕掛本、「Im zoologischen Garten」は、ペンギンこそ登場しないが、動物園と子どもと本、三者の親密度を証す一例だと思います。

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さて、このような「子どもの本と動物園の関係」は、現在も脈々と継承されています。例えば、『どうぶつえんずかん』(編集:井上靖、監修:古賀忠道、昭和48年、講談社刊)は、その好例。ペンギンは「さむいところにすむどうぶつ」のページに登場します。
さらに、『どうぶつの赤ちゃんシリーズ:ペンギン』(増井光子監修、2004年、金の星社刊)。金の星社は、絵本・児童書業界の老舗です。

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こうして見てくると、子どもの本〜どうぶつ〜動物園という、かなり強固で歴史的にも因縁の深そうな関係が浮かび上がってきます。どうやら、ペンギンも、そんな流れの中で、何らかの地位を築いてきたのではないか? そんな気配がしてきました。では、続きは、またいずれ…。

コメント / トラックバック 2 件

  1. penguinman より:

    ご苦労様です。切っても切れないですね、子供の本と動物園・・・。さらに動物園、水族館での赤ちゃんが繁殖がなぜ大切なのかをずっと継承されていくことを期待しています。

  2. 上田一生 より:

    penguinman様
    動物園や水族館での「心温まるエピソード」を紹介した本が、もっとあっても良いと思うのですが…。

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