ペンギン写真は、野生動物写真の代表的テーマの1つとしてしっかり定着したと思います。カレンダーや写真ポストカード、グリーティングカードだけでなく、立派な単行本写真集が、だいたい1年に1冊のペースで、世界のどこかで出版されています。これに、「子ども向けの写真絵本」を加えれば、その出現頻度はもっと上がるでしょう。
『PENGUINS』(FRITZ POLKING、Evans Mitchell Books、2009年)は、2006年のハードカバー版のソフトカバー本です。元来は「WILDLIFE MONOGRAPHS」シリーズの一冊で、彼の作品は、すでに多くのカレンダーやポストカードになっていますから、ご存じの方も多いでしょう。この写真集がいかに人気が高いかよくわかります。
『PENGUINS OF THE WORLD』(WAYNE LYNCH、A&C BLACK・LONDON、2007年)も、発売以来、世界的な人気を維持している写真集です。著者のウェイン・リンチ博士は、32歳で救急医療の現場から引退し、妻と共に極地写真家に転身した人物です。 写真だけでなく、解説テキストも、ペンギンの生態をわかりやすく紹介していて、これが人気の秘密だと思います。
もう一冊、『PENGUINS The Secret Lives of the World’s Most Intriguing Birds』(Brutus Ostling、Susanne Akesson、Collins、2007年)は、日本ではちょっと認知度が低いかもしれない。私は、カメラをのぞきこむジェンツーの「おバカな正面顔」が気に入っています。また、テキスト担当のスザーン・アケッソンの解説もすばらしい。
野生動物に関する知識は、様々な形で流布します。分厚く重いハードカバーの大型本は、確かに高価で手が届きにくいかもしれません。しかし、解説テキストのできいかんでは、ペンギン写真集の「博物書」としての価値は極めて高いと考えています。
本格的なペンギンデータブックは、そう簡単にポンポン出版できるものではありません。ナゼなら、ほとんど「商売」にならないからです。一部の専門家やディープなファンは喜んで購入してくれるでしょうが、あとは書店でちょっと手にとるくらいで、実際には買ってもらえないからです。
その隙間を埋めるのが写真集。私はそう考えています。日本でも、そろそろ情緒的な写真集だけでなく、きちんとしたテキストに支えられた本格的写真集が出現しても良いのではないでしょうか?