『ROCKHOPPER COPPER』(Conrad J. Glass MBE=五等勲士著、Chris Bates編、Orphans Press発行、2011年)は、第2版。初版は2005年に出た。イギリス領の絶海の孤島、トリスタン・ダ・クーニャ諸島について記した、入手容易な唯一の文献である。
副題は、「地球上で最も孤立した有人島に住む人々の来歴と暮らし」という。この島々には267人の島民がいるが、あのギネスブックには「世界で最も遠い島」として登録されている。つまり、この島に最も近い港から船で向かっても、到着するまで世界で最も時間がかかる島だ、というわけ。南大西洋のど真中にある。あのナポレオンが最後に流されたセントヘレナ島より、さらに孤立した島だ。
そして、この島々には、絶滅が懸念されているキタイワトビペンギンの70〜80%が集中して生息していると考えられている。貴重な「ペンギンの島」でもあるのだ。
このサイトでもご紹介したが、2011年3月24日、この島で大型船オリバ号の座礁・沈没事故にともなう重油流出事件が発生した。このサイトでは、これを「オリバ号事件」と称して、何回かにわたり経過をご報告した。詳しくは、4〜5月のブログをご覧下さい。また、その後の経緯に関しては、その時にご紹介したサイトでご確認いただきたい。
この事件は、日本があの大震災に翻弄されているまさにその時同時に発生したので、私自身も、その後十分な情報収集や追跡調査、支援活動、分析を実施できないで今日に至った。残念だが、当時は、自国の大災害を無視して「オリバ号事件」にのめり込むゆとりも道義もなかった。その心境と実情はご理解いただきたい。
しかし、今、ようやく「オリバ号事件の経緯と意義」について、それから、今からでも我々にできることは何か?考えても良い時期にきていると思う。
その前提として、こういう基本資料があるということを、まず明らかにし、これからの分析の準備としたい。
この本の著者であり、トリスタン・ダ・クーニャ諸島の警察官であり、長年にわたり同諸島に生息するキタイワトビペンギンや多数の野生動物と住民との共生を実現するためにに尽力してきた人物。それが、コンラート・グラスである。
この絶海の孤島には、なんと年間2000人以上の観光客が訪れることもある。その対応はもちろん、島内のあらゆる課題に適切な対応が要求される立場と仕事。それがグラス氏の使命だ。彼に捧げられた「Rockhopper Copper」=「イワトビ巡査(イワトビコップ)」というアダ名は、彼の勲章だ!
その活動をおりまぜながら、「オリバ号事件」について分析していきたい。