前回は、「わたりや動物の移動」に関する科学書をご紹介し、ペンギンをより良く知るには「ペンギン以外の書籍を読むことが大切だ!」というお話をしました。
今回は、その続きです。
鳥類が「羽毛恐竜の子孫」だということが一般に知られるようになってから、まだそれほど時間が経っていません。夏の「鉄板企画=恐竜展」で、毎回見られるのが、「恐竜の体色」や「羽毛恐竜の羽色」に関する展示や解説です。
最近の研究技術の進歩と研究者の不断の努力によって、恐竜の体色や羽色に関する様々な研究成果が明らかにされてきています。このブログでも、かつて中南米で発掘された大型化石ペンギンの羽色が部分的にわかったという情報をお知らせ致しました。
ペンギンが、なぜあんな羽毛の色をしているのか?あんな模様=「斑紋(はんもん)」なのか?という謎は、昔から様々な立場の研究者の関心を呼んできました。私も、いくつかの本で、それらの仮説をご紹介してきました。
ここにご紹介する「鳥類の羽色に関する専門文献(上下2巻)」には、キングペンギンやマゼランペンギンなど、いくつかのペンギンの羽毛に関する記述があります。しかし、大事なのはペンギンに関する直接の記述だけではありません。ほかの鳥類に関する、羽毛の形成過程、羽色の組み合わせに関する記述を細かく読んでいくと、ペンギンに関する様々な仮説が成り立つのではないか?そう思います。
『Bird Coloration : Function and Evolution』(Geoffrey E. Hill & Kevin J. McGraw編、Harvard University Press、2006年)には、そういう貴重なデータがギッシリ詰まっています。ペンギン研究を志す方々、サイトで「科学的なペンギン情報」を紹介していこうと考え、そう主張される方々、ぜひとも、このレベルの専門書に自ら目を通し読破する努力を惜しまないでいただきたい。それが、日本の「ペンギン理解」を国際的な標準に近づけていく力になると考えています。
もう1つ、「鳴き声」について。
ペンギンの「鳴き声」についても、羽色と同じく、これまでにも、様々な文献でいろいろな仮説や論文が紹介されてきました。例えば、日本では、青柳先生が訳されたフランスの研究者グループの文献がよく知られています。しかし、最近の研究状況は、さらに進化し、新しい仮説や課題が次々に登場しています。
『Bird Song : Biological Themes and Variations: SECOND EDITION』(C.K.Catchpole & P.J.B.Slater共著、Cambridge Uniuersity Press、2008年)は、第2版です。初版は1995年、同じ出版社から出され、この分野における基本的文献として評価されてきました。これに、最新の研究成果を加え、新しい仮説を加えて、「鳥類の鳴き声に関する最もまとまった専門文献」として再登場したのです。
ペンギンの鳴き声についても、実例が引用されています。しかし、個々の事例というよりは、鳥類全体の中で、ペンギンの鳴き声がどのような特徴をもっているのかについて相対的な位置を確認できることが、最も重要だと思います。
1つの生き物に関するより深く正確な理解は、その対象だけを注視するのではなく、その対象の周辺に関する観察や知識量を確保することによって、初めて可能になる。私は、そう考えています。
はじめまして!
私はペンギン大好きの大学生で,最近ペンギンの研究を始めた者です。
ちょうどペンギンの鳴き声について調べています。
しかし,明確な研究目的がたてられず悩んでいます。
なので,ぜひこちらの文献を参考にしたいと思います!
>千優 様
コメントをありがとうございましたm(__)m!!
「ペンギン研究」の第一歩を踏み出されたわけですね(^○^)!!
ペンギンの「歌声」を含む「ヴォーカル・コミュニケーション」に関する邦語文献で古典的・基礎的なものは、『ペンギンは何を語り合っているのか?』(どうぶつ社)か『ペンギン大百科』(平凡社)です。また、日本女子大学の研究紀要にも先行論文があるはずです。確認してみて下さいm(__)m!!
さらに、外国語文献ならば、キール大学のサイトで検索してみると何か新しい先行論文が見つかるかもしれません。
また、オーストラリアやニュージーランドの諸大学のコガタペンギンに関する論文にも、参考になる多くの先行事例が見つかるでしょう(^○^)!!チャレンジしてみて下さいm(__)m!!
何か詳しいご質問がありましたら、このサイトの「お問い合わせ」まで、いつでもご連絡下さいm(__)m!!
はじめまして。
四月から中三になります。
卒業研究でペンギンの羽の色(現在の色になった理由)について調べようと思っています。
紹介して下さっている英語の本はまだ読めそうにないので、日本語の文献を教えていただけないでしょうか。
よろしくお願いします。
>>芳映 様
「芳映」というお名前は「よしひで」とお読みするのでしょうか?
コメントをいただき、本当にありがとうございましたm(__)m!!
私のブログがペンギンに科学的興味をもつ若い方々に利用していただけて、本当に光栄です(^○^)!!
中学3年生ということは、今年か来年に15歳になられるのですね!中学校で「卒業研究」がある…というのは、とても大変ですが、素晴らしいことだと思います(^○^)!!
あることに興味を持ち、調べてまとめるということは、人間の基本的な活動の1つだと思うからです。
どうか頑張って調べてみて下さい!!
さて、ご質問は「ペンギンの羽毛の色(特に、現在の色になった理由)」についてでしたね!!まず結論から言いますと…「よくわかっていない」という残念なことになりますm(__)m!!
このブログでもご紹介致しましたが、アメリカのノースカロライナ州立大学の古脊椎動物学者=ダニエル・セプカという研究者が、インカヤク・パラカセンシスという学名の化石ペンギンを調査したところ、3600万年以上前のペンギンの羽毛と皮膚が残されていたことがわかり、しかも、このペンギンの羽毛の色が赤茶色と灰色だったということがわかったのです。
しかし、こういう発見は研究者にとっても「一生に一度あるかないか」というほど、大変珍しいことなのです。
最近は「羽毛恐竜化石」の発見と研究が急速に進んできました。「羽毛の痕跡=特に形や大きさ」については、比較的標本として残りやすく実例も豊富になりつつありますが、化石に皮膚や羽毛の科学的組成を調べるだけの組織が残されているかどうか…ということになると、なかなか難しいのです。
だから、ペンギンの羽毛の色がどのように進化してきたか…ということについて何かはっきりわかっている(つまり化石などの証拠で証明する)ことは、今のところまだ何もない…ということになります。
しかし、あきらめてはいけません(^○^)!!
最新の研究状況について何か具体的に知りたければ、まず、ペンギン会議全国大会でもご講演いただいた安藤達郎博士に質問し
てみて下さい!!
安藤博士は北海道にある足寄動物化石博物館の先生です。
この博物館に連絡して、安藤先生に質問してみてはいかがでしょうか?
また、千葉県我孫子市にある「鳥の博物館」には、様々な鳥に関する資料がたくさんあります。
この博物館にも問い合わせしてみてはいかがでしょうか?最後に…「ペンギンの羽毛の色の進化」については何も書かれてはいませんが、『鳥の起源と進化』(アラン・フェドゥーシア著、黒沢令子訳、平凡社、2004年7月7日発行)には、鳥の羽毛がどのように進化してきたのかについての詳しい解説がありますから、近くの公立図書館などで読んでみてはいかがでしょうか?
というわけで、あなたのご質問に即答することができず大変申し訳ありませんが、ここでお知らせしたことを手がかりにもう少し調べを進めてみて下さいm(__)m!!
また、「卒業研究」がまとまりましたら、ぜひ、教えて下さいませ(^○^)!!楽しみにお待ちしております(^○^)!!
返事が遅くなり申し訳ありません。 沢山のアドバイス大変有難うございました。
とても勉強になりました。
今後の卒研の参考にさせて頂きたいと思います。
可愛いと思って選んだペンギンがこんなに奥深いものと知って驚きました。
これからも宜しくお願い致します。
ちなみに「はなえ」と読みます。
どうも有難うございました。m( _ _ )m