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2011・エディンバラ動物園訪問記〜その6(最終回)〜ちょっと気になること

2011 年 10 月 29 日 土曜日

歴史と伝統と実績とが醸し出す重厚な落ち着きが、エディンバラのペンギン展示にはある。なんといっても、圧倒的な個体数を誇るジェンツーとイワトビの群れ!まさに、コロニーとか繁殖集団というに相応しい迫力だ。

ペンギンは群飼いすることで、個体群が安定し、繁殖率も上がる。キガシラのように野生で「孤独を好む種」は関係ないが、通常、野生で大きな繁殖集団を構成する種は、飼育下でも同じような条件を整えてやることが望ましい。

エディンバラの繁殖率が良いのは、その基本がしっかり守られているからだ。従って、個体数が増えれば、それに見合うように、繁殖場所も飼育施設全体も大きくする必要がある。必然的にプールも深く広くしなければならない。エディンバラのペンギン展示施設が「世界一の敷地面積」を誇っているのは、そういう事情からであって、「世界一」を名乗りたいからだけではない。当然の結果なのだ。

確かに有名な「ペンギンパレード」は楽しい。しかし、広い敷地内を勝手に群行動するジェンツーやイワトビの姿を観ていると、こちらのほうが自然な姿だと思える。

ただ、昔から少し疑問に感じていた点がいくつかある。エディンバラの素晴らしさをけなすわけではないが、ここにはまだ改善の余地があるのでは?そう思うことを書いておきたい。

まず、敷地内のコンクリートの広さ。プール周辺をコンクリートでかためるのは、確かに管理上の利点が大きい。それは、プールから上がったペンギンたちは、しばらく水辺で体を乾かしたり休んだりするからだ。その間、ペンギンの体からは水が滴る。また、ペンギンが滞留すれば糞が増える。ということは、プール回りは常にビショビショで汚れが激しい、ということになる。だから、そこをコンクリートにして掃除しやすく乾きやすくしておくことは鉄則だ。

しかし、それにも限度がある。コンクリート面をあまり拡張すると「趾瘤症」の発症率が上がる。特に、エディンバラのミナミイワトビたちには「趾瘤症」が多く見られ、中には重症化していると思われる個体も数羽見られた。

ペンギンプール周辺のコンクリート ペンギン飼育施設

改善策は単純。土の面積を拡大すること。もう1つ、特にイワトビの展示には、落差の大きい岩場を設けること。今も、エディンバラの自然の傾斜を活かした斜面があることはある。しかし、イワトビたちの動きを観ていると、ジェンツーに比べて緩慢で運動量が少ない。

私は、以前から、飼育下のイワトビをもっと活性化する展示ができないものか?と、考えてきた。野生のイワトビたちの上陸シーン、岩場登りの能力と独特の動き。これらを飼育下で、もっと再現できれば、それはイワトビたちにとっても良い刺激になるし、観察するサイドにとっても得るものが大きい楽しい展示になるに違いない!!

これには、ちょっとした工夫がいる。それは、申し訳ないが「企業秘密」だ。もし、イワトビたちの楽しくエンリッチメント効果の高い展示をお望みの園館関係者がいらっしゃれば、ご相談に応じます!!

もう1つ、プールについて気になることがある。それは、水管理。このプール側面の映像をご覧いただきたい。全体が緑色にくもっている。これは、アオコ等の発生を抑えられていないことや、基本的な浄化装置が働いていないことを示している。さらに、おそらく、プール内面のガラス拭きが不十分なのだろう。

アオコの発生したペンギンプール アオコの発生したペンギンプール2 アオコの発生したペンギンプール3

ペンギンの羽毛への影響や健康面を考えて、プールに投入する塩素を抑えているのかもしれない。しかし、せっかくこれだけの大容量の専用プールを造り、大きな観察窓を設置したのならば、もっと水中の動きを観察しやすい水環境を準備すべきだ。現状では、水中のペンギンがガラス面に最接近しない限り、水中のペンギンを明瞭に観察できない。まあ、資金面のハードルが高いのかもしれないので、無理強いはできない。

かつて「動物園の水管理は最悪」と陰口をたたかれた時代もあった。浄化装置がないことが当たり前だった。しかし、プールを上からだけ覗きこむ時代は去り、横から水中の姿を観察できることが「標準仕様」になった現在、すでに詳しくご紹介したロンドン動物園の「ペンギンビーチ」や埼玉子ども動物園の「ペンギンヒルズ」のように、水族館レベルの高い透明度を維持することが、当たり前になりつつある。

エディンバラでも、ぜひ、間もなく訪れる開園100周年を期して、「プールの透明度アップ」に取り組んでほしい!!

では最後に…、ちょっと気になることでも、良い意味で気になることを2つ。

1つはベンチ。なんのへんてつもないベンチだが、なんと69年前に寄贈されたもの。ペンギンをジックリ観察できるベストスポットに置かれている。寄贈者の温かい気持ちに感謝しながら、ゆったりペンギンを楽しむ。こういう「心のゆとり」が、いろいろな園館に欲しいものだ。

エディンバラ動物園のベンチ1 エディンバラ動物園のベンチ2

2つ目は、売店と遊具。以前「ペンギンカフェ」をご紹介したが、それとは別物。まあ、ここでもピングーの底力を感じたが、「ピングーは日本専属」みたいな評価をブッ飛ばす物証である。イギリス人もけっこう好きですよ!!

エディンバラ動物園の売店 エディンバラ動物園の遊具

6回にわたりお伝えしてきた「2011年のエディンバラ」、いかがでしたか?これから訪問される方々、ぜひ楽しい時間を過ごして下さい。また、何か新しい変化があったら、ぜひ教えて下さい!!

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