最近報じられた旭山動物園の「ペンギン目線カメラ」について

2014 年 11 月 30 日 日曜日

最近、朝日新聞で報じられた旭山動物園の「ペンギン目線カメラ」です。記事によれば、東京のIT企業がこの映像をオンライン公開しているとのこと。また、同じく記事によれば、「フンボルトペンギンは腹這いにならない」し「装着する時間も2~8時間に制限している」から問題ない…ということですが!?

まず、このカメラは、フンボルトペンギンの腹に装着されているので、「立っている時のフンボルトペンギンの目線を正確に表現している」とは言い難いと考えます。そもそも、この新聞に掲載された写真そのものが、実際のフンボルトペンギンの目線とカメラの目線とが異なっている(違う方向を見ている)ことを雄弁に証明しています。

次に、フンボルトペンギンは腹這いになりますので、このカメラはペンギンの自然な行動を阻害していることは明らかです。フンボルトペンギンが、本来「穴を掘ったり岩の割れ目に入り込んだりして巣をつくり、腹這いになって抱卵したりヒナを育てたりするする基本的生態をもつペンギン」であることを理解しているならば、「フンボルトペンギンが腹這いにならない」という発想は全く出てこないはずです。また、繁殖期以外でも、フンボルトペンギンは腹這いになってくつろぐことがよくあります。腹にカメラがあると、そういうことができませんから、これはペンギンにとってストレスや疲労の原因となる可能性があります。

他方、野生動物に様々な発信器や計測機器を取り付けて生態等を調査・研究するテレメトリーやバイオロギングといった研究手法が、近年急速に発展し普及してきました。と同時に、研究者の間では「如何にして機器を装着した個体の自然な行動を阻害することなく、また個体を傷つけたり過度なストレスを与えることなく有意なデータを収集するか」ということが、極めて重要な研究条件として認識されてきています。最近話題になった「エンペラーペンギンのヒナをかたどった移動式カメラ機材」も、その一例です。

以上のように、今回の「フンボルトペンギン目線カメラ」は、フンボルトペンギンの本来の自然な行動を阻害している恐れがあり、また、過度なストレスを与えている可能性も否定できません。なにより、カメラの目線とペンギンの目線とが一致していないわけですから、正確な意味で「ペンギン目線カメラ」とは言い難いでしょう。しかも、この映像で、何か貴重な発見やペンギンの生態に関する得難い知見が得られるかといえば、そういう効果はほとんど見込めないとも考えます。

旭山動物園は、優秀な動物園・水族館を顕彰する「日本エンリッチメント大賞」を数々の分野で受賞した輝かしい実績を誇る「日本を代表する動物園の1つ」だと考えております。私もずっと大ファンです!!だからこそ、今回の「フンボルトペンギン目線カメラ」につきましては、早急に改善のご検討をいただければ幸いです。

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