まずは、友人のN様から頂戴したメールをご覧下さい_(._.)_!!:
「おはようございます。
Yahoo!ニュースにも 出ましたので その記事を貼ります。
ペンギンが大量死、氷山に餌場への道阻まれる 南極大陸CNN.co.jp 2月14日(日)14時34分配信
(CNN) 南極大陸東部の海岸にすむアデリーペンギンの群れが巨大な氷山に通り道を閉ざされ、これまでに約15万羽が死んだことが分かった。南極研究の専門誌が今月号で報告した。
ペンギンの前に立ちはだかったのは「B09B」と呼ばれる氷山。その面積は約2900平方キロに及ぶ。20年近くにわたり沿岸を漂っていたが、2010年にペンギンの群れがすむコモンウェルス湾のデニソン岬に漂着した。この結果、ペンギンはえさを取りに行く道を閉ざされてしまったという。
えさが取れる場所までの道のりは60キロを超え、かつては16万羽だった群れが1万羽まで減っている。
全体で見ると、アデリーペンギンは氷河の融解などにより、生息数が増加傾向にあるとされる。
コモンウェルス湾から約8キロ離れた場所にすむ別の群れは繁殖を続けていることから、デニソン岬での激減は氷山が原因と断定された。
専門家らによると、氷山が流氷に破壊されない限り、この群れは今後20年のうちに消滅してしまうという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160214-35077826-cnn-int
よろしくお願いします。」
N様、いつも貴重な最新ペンギン情報を頂戴し、本当にありがとうございますm(__)m!!また、同様の情報をお寄せいただきました朝日新聞記者の村山様にも、深くお礼申し上げます_(._.)_!!
さて、お二人から頂戴した情報を総合致しますと、今回の報道(CNN等による)は…「20世紀末に流れ出た巨大氷山=B09B」が、2010年以降デニソン岬に漂着・座礁し、その周辺にあったアデリーペンギンのルッカリー(巨大営巣地:約16万羽のペンギンが存在した)に影響を与え、そのルッカリーのペンギンが最近数年間に激減し、近い将来、そのルッカリーは消滅するだろう。そういう見解が、南極研究の専門誌に紹介された…ということですね。
実は、この巨大氷山(B09B)漂流・漂着の経緯は、以前からかなりよく知られた話で、あまりにも巨大で、しかもなかなか低緯度に流れていかないため、南極のあちこちに様々な影響を及ぼしている「有名な氷山」です。従って、結論から申しますと、アデリーペンギン15万羽が死亡した…という心配はあまりない…、あるいは、今後の詳しい確認作業を経ないと確実なことは言えない…、と考えております。
その理由をご説明致しましょう。
確かに「B09B」はケタ外れに大きい氷山です。神奈川県の総面積が2416k㎡ですから、この氷山は神奈川県よりも500k㎡近く広かったことになります。このような超巨大氷山が漂流したあげく、南極沿岸に戻ってきて座礁するような現象を、専門家の一部は「ブーメラン現象」と呼んでいます。この現象は、南極周辺の海流や浮氷の動きや分布に影響を与えるだけでなく、南極海や南極沿岸で繁殖したり生活したりしている野生動物に少なからぬ影響を及ぼしてきました。巨大氷山の出現は、最近の地球温暖化と重ね合わせて語られることが多いようですが、専門家の多くは必ずしも地球温暖化によって巨大氷山の出現率が高まっているとは考えておりません。というより、南極が現在のような形になってからの「氷山形成の歴史」が詳細で科学的なデータとして経時的かつ網羅的に記録されていない以上、「最近の地球温暖化で巨大氷山の出現率が高まった」と断言することは難しいでしょう。
一方、やはり専門家の多くは、南極では今回のような巨大氷山によるなんらかの「撹乱現象(あるいは撹拌現象)」が、過去数百万年にわたり度々繰り返されてきたのではないか…とも考えています。つまり、具体的にいつどのような大きさの巨大氷山がどこに出現してどのような影響を及ぼしたのかについては、詳しい科学的データはないものの、そのような現象の多発を想定しないと、論理的に説明できない「科学的事実」が、いくつかわかってきたからです。その1つの事例が、アメリカの著名なペンギン研究者=デイビッド・エインリー博士による一連の研究です。エインリー博士は、南極で過去47年間アデリーペンギンの研究を続けてきた「ペンギン学の世界的権威」の1人です。博士は、南極各地に残された「アデリーペンギンの繁殖地とアデリーペンギンの亜化石(半ば化石化したアデリーペンギンの死体)」を丹念に追跡調査してきました。その結果、「アデリーペンギンは約250万年前から南極で生活していたらしい」こと。その間、南極の様々な環境が激しく変化した時代には繁殖地や生息地を柔軟に変更してその危機を乗り越え、南極の環境が安定した時代には繁殖地や生息地域を着実に拡大して個体数を増大させてきたことがわかってきたのです。
このエインリー博士の結論を補完するような知見が、最近の「超巨大氷山の漂着事例」の際に、いくつか報告されています。例えば、南極半島の東西では、1990年代後半から巨大氷山による「ブーメラン現象」が何回か起きています。その時犠牲になったのは、エンペラーペンギンとアデリーペンギンでした。突然巨大な氷山が海岸に座礁したため、営巣地から海までの距離が大幅に遠くなったり、海で食べ物を採り、それを巣で待つヒナに運ぶ手間と時間がかかるようになってしまい、子育てに失敗したり途中で子育てを諦めたりするつがいが急増して、繁殖率が激減し、多くのヒナを失うことになったのです。また、親鳥や既に巣立ちしていた若鳥のなかには、巨大氷山の座礁によって形成された氷の深い割れ目等に落ちてしまい、そこから這い出すことができずに凍死したり餓死したりした個体が少なからずいたのです。
しかし、そのシーズンの繁殖を諦めたり、長年繁殖を繰り返してきた特定の営巣地が失われてしまったからといって、全ての成鳥がその場に留まり続けて死んでしまったわけではありませんでした。正確な個体数や営巣地毎の詳細な比較データがあるわけではありませんが、実際に観察できた死体の数は、その場で繁殖していた個体数をかなり下回っていたのです。
つまり、過去の「超巨大氷山座礁によるペンギン営巣地への影響」の事例を見る限り、危機に直面したペンギンが「成鳥もヒナも全滅した」という例は、おそらく極めて少ないと考えられるのです。氷の割れ目等に落ちるという副次的な問題が生じない限り、親鳥や若鳥の多くは、「そのシーズンの繁殖を諦めはするが、自らの生存のために必死でその場を脱出しようとする」ことが知られています。南極の場合、海は必ず「北」にあります。巨大氷山によって海への距離が遠くなっても、独特の方位感知能力を駆使して、成鳥達は「食べ物がある安全な海」を目指すのです。もちろん、全ての成鳥が脱出に成功することはないでしょう。しかし、全ての成鳥が何もせずに死を待つことは、もっと不自然だと思われます。
傍証として、フンボルトペンギンの例をあげましょう。エルニーニョ現象が激しく、住み慣れた営巣地近くの海に食べ物が少なくなったりすると、フンボルトペンギンの成鳥の多くはどこかに移動してしまいます。昔は、フンボルトペンギンが死んでしまったと考えられていましたが、最近では、「営巣地周辺の環境が回復するとそこに戻ってくるらしい」と考えられています。
さて、ご理解いただけましたでしょうか?今回CNN等によって報じられた「超巨大氷山座礁によるアデリーペンギン大量死」の情報は、確かに1つの可能性を示唆しています。ひょっとしたら、デニソン岬の16万羽のアデリーペンギンの内、すでに15万羽は全滅(全て死亡)したのかもしれません。しかし、15万羽のアデリーペンギンの死体を本当に確認できたのでしょうか?「その場から姿を消した」ということだけで「全て死んだ」と、思い込んでいる…という可能性は皆無でしょうか?
私は、以上述べてきましたような根拠で、「消えた15万羽のアデリーペンギンの多くはどこかほかの所に移動した可能性が高い」のではないか…と考えております。今後の続報が待ち遠しいですね!!