キュラソーの小澤由紀子さんから、「こんなニュースがありますよ!」とご指摘いただきました。
概略は次の通り。
フランスとノルウェーの研究チームがポゼッション島(フランス領)で繁殖するキングペンギンについて、1998年から追跡調査した結果、金属製のフリッパーバンドをつけた個体は、つけない個体に比べ、「生存率が10年間で16%低く、ヒナの平均出生率も39%少ない」ということがわかった、ということです。
また、バンディングした個体は、繁殖のために島に帰ってくる時期も遅かった、そうです。
ニュースについては以下のサイトをご覧下さい。
ペンギン 識別バンドで繁殖力低下…「調査の再考を」
なお、フリッパーバンド(正しくは「翼帯」)の影響については、すでに20年以上前から専門家の間で議論されており、材質や装着方法、個体への悪影響等について、いくつものレポートや論文が発表されています。
特に、ケープペンギンでの研究が有名です。
最近では、フリッパーバンドではなく、マイクロチップを使った個体識別法がとられるようになってきましたが、外部の観察には不向きでしかも費用が かかるため、依然としてフリッパーバンドを使っている研究者や飼育施設が多いのが現状です。
私も、さっきこの記事を読みました。
ペンギンの調査は大事だけど、少しでもペンギンの負担にならない方法を見つけたいですね。
上田先生
早速トピックスを拝見しました
ガラパゴスの人工繁殖させて自然に帰しているゾウガメも
マイクロチップを埋め込んでいます
主流の方法にできるファンドの仕組みでもできるとよいですね!
manchot 様
コメントありがとうございますm(__)m!!
フリッパーバンドの問題は、古くて新しい問題です。様々な「個体識別法」が知られていますが、どれも「オールマイティー」ではありません。
資金さえあれば、例えば数年前にイギリスのブリストル大学の研究チームが開発し実用化に成功した「映像による個体認証システム」が、今のところ、最もペンギンに負担をかけないですむ方法です。しかし、これはとても高価です。
研究や保全、飼育という世界にも、「市場原理」は情け容赦なくのしかかってきます。
ところで、昔から知られていたフリッパーバンドの問題が、なぜ今頃こんなに大袈裟に、わざとらしく報道されるのでしょう?
少し考えすぎかもしれませんが、私は、今回の「騒ぎ=報道」の背景には、たぶん次のような「意図」があると思います。
それは、地球環境の変化を反映すると考えられている、つまり「モニタリングアニマル」としてのペンギン研究に「有意な誤差がある」なら、これまでのペンギン個体数の減少という「調査結果」には科学的疑念が生じる、というわけです。
「ペンギン個体数の減少は地球環境の悪化が原因ではなく、研究方法の誤りによる誤差」だった。そう言いたい人がいるのではないでしょうか?
「だから、地球温暖化は存在しない」という理屈に繋げたいのかもしれません。
結論から言えば、その論理は成立しません。
なぜなら、フリッパーバンドをつけていようがいまいが、「全体としてのペンギンの個体数は、はっきりとした減少傾向を示している」からです。特に、いわゆる「温帯種」やイワトビペンギンのなかまには、その傾向が顕著です。
今回、私が、この報道に注目したのには、そういう背景があったのです。いかがお考えですか?
波形 様
貴重なコメントをありがとうございますm(__)m!!
野生動物へのアプローチには、難しい問題がつきまといますね。「愛護」、「保全」、「研究」の視線や立場は、微妙に違います。
しかし、野生動物に、できるだけ「自然なふるまい」を保障することが、三者に共通する基盤だと思います。いずれにしても、常に工夫する気持ちを忘れてはなりませんね!
これからも、ご指導をよろしくお願い申し上げますm(__)m!!