報告者は、日本野鳥の会自然保護室の山本裕さんです。
最近、典型的な夏鳥であるツバメが全国的に減少しているという報道を耳にされた方も多いと思います。この記事には、今年5月に行われた「原発被災地におけるツバメの生息状況」に関する概要が紹介されています。南相馬市と飯舘村では、ツバメの姿は少なく、相馬市では多かったようです。
また、特に制限区域内のツバメの数は極端に少ないことがわかりました。
「その原因としては、放射性物質の影響で広い範囲で水田が放棄地となっていること、また人が住まなくなったため、カラスなどの天敵に襲われやすくなっていることなどが確認できました。」とのことです。
以前にも記しましたが、1986年のチェルノブイリ原発事故の際には、放射性物質の影響でツバメの体の一部が白化する突然変異の事例が報告されています。野鳥や昆虫、野生動物は、食べ物である植物等を介して放射性物質を摂取せざるを得ない立場に置かれています。彼らは言わば「最初の犠牲者」なのです。
そして、私たちが注視していかないと、やがてそれは「生物濃縮」という過程を経て、我々人間の健康や命をも危険にさらすことになるのです。
私たちは、この現実を厳しく受けとめ、かつ冷静・科学的に観察・分析して、適切に対応していかなければなりません。これからも、これ等の情報に十分注意していきたいと思います。