福田道雄さんは、この雑誌の1巻2号(1997年発行)にも『日本におけるペンギンの飼育史試論』を発表されています。今回の記事の「後書き」には…「しかしながら、戦前の飼育状況については、資料収集不足と推測間違いの記載が何ヵ所もあった。そこで、戦前に関する部分を全面的に書き改めたのが本編である。」とあります。
戦前(第二次世界大戦前)の日本国内のペンギンの飼育・展示に関しては、まだまだ基本的な資料・史料の収集・整備が不十分な状況が続いています。このブログでも何回か強調して参りましたが、動物園や水族館の活動を総合的に分析・研究するための組織的・専門的かつ包括的な資料・文献収集・管理の動きは、残念ながら未だに見られません。そのような現況を考えると、この福田道雄さんのご研究は、極めて重要な業績だと思います。
嬉しいのは、貴重な史料の映像をカラーで示して下さっていることです。例えば、浅草花屋敷でのペンギン展示に関する記述や絵葉書、阪神パークのカラー絵葉書の映像は、大変重要なものだと思います。
今回は、動物園での飼育・展示に関する記述が中心ですが、同時代の水族館ではどのような状況だったのか?「動物園」という括りに拘らず、「ペンギン飼育」というより広い視点から、つまり水族館やそれ以外の施設にも史料収集と分析の網を拡げた論考が出現すると、さらに議論が深まるのではないか?…そんな風に考えています。
また、改めて、専門的かつ包括的な園館史料館の設立を、心から望む次第です。