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サイト開始2周年特集「私的ロンドン動物園ペンギン案内」〜その2〜「ロンドン動物園の位置と環境について」

2011 年 8 月 24 日 水曜日

今回のロンドン訪問で、私のホテルはオクスフォード・ストリートの近くにあった。テムズ川の北岸で、ロンドン中心部のやや北寄りにあたる地区だ。ロンドンは、テムズ河畔の比較的平坦な地形に形成された河川港都市だが、真っ平というわけではない。北岸がやや高く、南東に向かって下っていく。

動物園は、その北部に位置する。広大なリージェントーパークの北にあり、園内をリージェント運河が貫流している。このロケーションが、動物園の環境を決定し、規制してもいるのだ。

最近、一般に「園館論」の中では、動物園や水族館がおかれた周辺環境については、あまりとやかく言われない傾向がある。設立の歴史的、経済的背景や、飼育動物の種類や数、飼育展示施設やスタッフや教育普及活動については、かなりの関心が寄せられるが、施設全体をとりこむ立地環境について語られ考察されることはあまりない。

これは片手落ちだと思う。木を見て森を見ないというか、近視眼的というか、「生き物を活き活きと飼う」上で極めて重要な要素から目をそむけているのだとしか思えない。あるいは、立地環境があまりにも劣悪なので、せめて目先・小手先の人工的施設を工夫することで、そのマイナスをカバーしようとしているのかもしれない。展示動物のエンリッチメントは、展示施設の範囲内に限定されるものではあるまい。

また、園館におけるランドスケープへの配慮は、個々の展示場だけでなく、動物園や水族館を大きくとりこんだ施設全体の立地環境としての景観にも及ぼされるべきだ。それは、都市型園館も例外ではない。

現在では、園館には様々な立地環境が見られるようになった。「都市型」以外にも、いわゆる「郊外型」や「リゾート型」、「海浜型」や「山岳型」などが多数共存している。敷地面積の大小に拘わらず、「どこに園館を造るか?」という問題は、昔ほど様々な制約に縛られない状況になっていると思う。

話をロンドン動物園にもどそう。

そういう立地環境という視点で、改めてこの動物園を眺めてみると、長い歴史は伊達じゃない!という実感をもつ。

例えば、動物園が広大なリージェントパークの一隅を占めるという点。つまり、動物園が「公園」なのではなく、公園の一部が動物園なのだ。日本で言えば、同じ都市型動物園である上野動物園も上野公園の一部を成している。

もう33年以上前になるが、私が本気でヨーロッパの園館を巡り始めたころ、一番強烈に感じたことは「公園だ!」ということ。簡単に言えば、樹木の豊かさ、本格的庭園としての落ち着きだ。高緯度にあるヨーロッパの園館で、樹木が豊かだというと、なんだか変だが、あの巨木の立ち並ぶ空間には、日本の園館にはない静寂や成熟した大人の施設としての落ち着きがあった。

水族館プロデューサーの中村元さんは、「お客さんは水族館に水を見に来るんです」と仰る。その通りだと思う。だとすれば、動物園に来るお客さんは森を見に来る、のかもしれない。

そう思ってしまうくらい、33年前の私にとって、ヨーロッパの動物園は「癒しの森」だった。ロンドン動物園もその1つであることは言うまでもない。

で…、その朝、天気もよかったので、妻と私は、宿から歩いて動物園に向かった。

当然、そうだと知らなければ気づかないくらい緩やかな「登り」が続く。リージェントパークの南口から入り、案内板に従って広々とした公園の緑や花を楽しみながら動物園を目指す。歩いていく内に、いつの間にか仲間が、同じ方向を目指す親子連れやカップルが増えている。結局、ホテルからの所要時間は30分くらいだった。

実は、マイカーやレンタカーで来れば、専用駐車場からは徒歩3分だし、タクシーを使えば正門に横付けしてくれる。でも、それって、ロンドン動物園の魅力を半分くらい味わい損ねている感じがする。リージェントパークの緑のカーテンを何枚もくぐり抜け、美しい花々や木の葉に目を休ませながら見る動物園の正門は、「ああ来たんだな!」という特別な感慨を抱かせてくれる温かいホストだ。実は、リージェントパーク内を歩いて動物園にたどり着くというアイディアは、偶然の産物ではない。例えば、有名なロンドン地下鉄の駅を動物園の正門前に造ろうという計画がかつてあった。しかし、エドワード七世が「王立公園への地下鉄乗り入れ」に強硬に反対したため、計画は頓挫した。だから、地下鉄を使うとすると、リージェントパーク駅かカムデンタウン駅またはチョークファーム駅から15分ほど歩くことになる。このエドワード七世の結論を批判する向きもあるが、私は「英断」だったと思う。

さて、いよいよ動物園の正門をくぐるのだが、その前に、もう1つだけ言い足しておきたい。それは水のこと。

パリもそうなのだが、内陸にありながら、ロンドンとパリは「水の都」でもある。パリは、もともとセーヌ川の城塞都市だし、あの悪名高いスモッグの原因ともなったロンドンの霧は、テムズ川と海からの湿った空気の産物だ。

ロンドンの北に位置する動物園も、当然その影響を受ける。しかも、園内には運河が流れている。

この水環境の豊かさが、乾燥した空気や冬季の寒気から、動物たちを守ってくれる。リージェントパークの豊かな緑も、この水の賜物だ。水はペンギン達の必需品。冷たくて豊富な水量を確保できるから、ペンギン達も元気に泳げる。ただし、今回の「ペンギンビーチ」の水は、実は淡水ではない!!そのお話は、また次回以降のお楽しみ…。

懐かしい動物園の正門をくぐる。入口には、開園時間を示すサイン。ふと見ると新しいガイドブックの表紙は「元気に潜るフンボルト」だ!ガイドブックは1冊5ポンド。その中に、大きめの園内マップがはさまっている。「ペンギンビーチ」は、正門を入って左手方向。どうやら、メインズーショップの真ん前だ!!ああ!先が思いやられる(涙)

ロンドン動物園-正門 ロンドン動物園-正門-ペンギンの飾り ロンドン動物園-営業時間案内看板 ロンドン動物園-ガイドブック表紙 ロンドン動物園-ガイドブック-ペンギンビーチの解説 ロンドン動物園-ガイドブック-園内全体地図 ロンドン動物園-ガイドブック-園内地図-ペンギンビーチ

「今回は、ペンギンとショップとレストランだけ!」と決めていたので、申し訳ないが、ほかの動物には眼もくれず、一直線にペンギンを目指す。…、そこに出現したのが、この光景。

ロンドン動物園-ペンギンの看板 ロンドン動物園-ペンギンプール ロンドン動物園-ペンギンプール2

今回はここまで!ちょっと理屈っぽかった点は、ご容赦下さい!次回は、いよいよ「ペンギンビーチ」の展示に注目!!お楽しみに!!

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