笹森映里隊員の南極越冬便り~第5回~

2016 年 4 月 18 日 月曜日

「1月、スカルブスネスで訪れたルッカリー。アデリーのルッカリーはなんとなくピンク色をしています。確かに、糞をよく見てみると白にオキアミの赤っぽい色が混ざっています。 この日の気温は+3℃を超えており、ヒナたちは暑そうに口を開けて呼吸をしていました。

ときどき重たそうなお腹の親ペンギンがよたよたとルッカリーに戻って来ては、ヒナが駆け寄ってピーピーと鳴いてエサをねだります。もうだいぶ大きくなったヒナに追いかけられて親ペンギンも大変そう。

ルッカリーに残っている成鳥には、恍惚のディスプレイをするものや、小石を運ぶものもいました。もう1月も終わるというのに、若いからか、独り身なのか、育雛に失敗したのか、、これはよく見られる光景なのでしょうか?

すぐ側の岩の上には、ペンギンの敵・オオトウゾクカモメの姿。よく見ると白いふわふわの毛をしたかわいいヒナもいます。こちらも子育てシーズンのようです。 海岸線に目をやると、骨と足とフリッパーだけが残ったアデリーペンギンのヒナの死骸がありました。

オキアミ色の糞に給餌風景、骨になったヒナの姿。目の前には南極の食物網が広がっていました。 笹森映里隊員の南極越冬便り~第5回~ 笹森映里隊員の南極越冬便り~第5回~ 笹森映里隊員の南極越冬便り~第5回~

笹森映里様、いつも貴重な南極ペンギン情報をありがとうございます!!野生地には、独特の光景や雰囲気があります。人工的な環境では「排除されてしまう死体や糞や様々な残骸や天敵たち」、そして既存の文献や論文には現れない多くの例外的行動や謎。そういう全てのことが渾然一体となって、しかも動かし難い現実として、眼前に展開するのですね。

私も、様々な現場での活動を通じて、自分がとらえきれなかったこと、映像や文字では記録し描ききれなかったこと…、そういうものの多さ、大きさ、大切さ…について、痛感しております。自然と野生の現場には、人間の拙い表現力を遥かに超越した、複雑で微細でしかも巨大な事実があるんですね。

これからも、南極の大きさ、そこに生きる生き物たちの営みの不思議について、最新の情報をお知らせ下さい!!次回の「お便り」を楽しみにお待ちしております。

コメントをどうぞ

ページトップへ