現在、世界の耳目は、ロシアによるウクライナ侵略とトルコ・シリアでの甚大な地震被害とに集まっています。この2つの出来事は、私たち日本人にとっても他人事ではなく、ウクライナの方々や被災地の方々への支持と支援とを続けていくべきだと考えております。
さて、なぜか日本ではほとんど大きく報道されておりませんが、南米のペルーでは、昨年11月下旬以降、鳥インフルエンザによる野生動物の大量死が発生し、「180日間の警報」が発令されています。
AFP、BBC、リマのアメリカ合衆国大使館、アメリカの複数の大学や研究者からの情報を簡単にまとめると、だいたい以下のような状況です。
1、2022年11月24日、南米ペルーの首都リマ近郊の浜辺で、鳥インフルエンザA(H5N1)への感染が疑われるカッショクペリカンの死骸が複数見つかり、当日、ペルーの農業検疫局は、それらのペリカンから高病原性鳥インフルエンザAに感染した事例が3件あることを発表しました。即日、「180日間の警報(2023年2月下旬まで)」が発令されました。
2、2022年12月8日、ペルーのアメリカ合衆国大使館から、ペルー在住、またはペルー訪問中のアメリカ人に対して、アメリカ合衆国疾病管理予防センター(CDC)から、「鳥インフルエンザに関するリスク低減」についての「注意喚起」情報が出されました。
3、その後、2023年2月8日までの間に、以下のような状況がわかってきました。
①、ペルーの国立農業保健サービス(SENASA)によれば、昨年11月に死亡したオタリア(アシカのなかま)3頭とイルカ1頭からも「H5N1」の陽性反応が確認されたことを公表しました。
②、さらに、SENASAによれば、ペルー国内の7つの沿岸自然保護区内で、少なくとも585頭のオタリアと5,500羽の野鳥の死体が確認され、それらも鳥インフルエンザが原因だと推測されると発表しました。これらの「野鳥」のほとんどは、カッショクペリカンとフンボルトペンギンだと考えられます。
③、また、ペルーの保健省からの情報として、一部の報道機関からは、ペルー中部の動物園で死亡したライオンの死因が「H5N1」であることが確認されたという報道もありました。
④、世界動物衛生機構(WOAH)は、中南米全体にわたって過去4ヵ月間に高病原性鳥インフルエンザが急速に拡散していることに懸念を表明しています。特に影響を受けている国として、ボリビア、コロンビア、コスタリカ、エクアドル、ホンジュラス、パナマ、ペルー、ベネズエラ、チリをあげています。なお、ニワトリなどの被害は、総計120万羽以上だと言われています。
4、1~3の状況を勘案すると、現状把握とこれからの懸念材料として、以下のようなことが考えられます。
①、南米の太平洋岸諸国と中米諸国に高病原性鳥インフルエンザの感染が拡大しつつあること。
②、感染、発症、死亡事例としては、鳥類だけでなく、オタリア、イルカ、ライオン(飼育個体)にも及んでいること。
③、鳥類の中には、フンボルトペンギンが多数含まれている可能性が高いこと。ただし、死亡個体数は不明。
④、このまま感染が拡大すれば、エクアドル領のガラパゴス諸島にも感染が拡大し、希少な野生動物(例えばガラパゴスペンギン)や生態系に大きなダメージを与える可能性があること。
⑤、現地、南米諸国で活動している保健衛生保全当局者、保全団体スタッフ、ボランティアをどのように支援していくか、効果的な方法を考える必要があること。
昨年来、日本でも鳥インフルエンザによる被害が拡大し、深刻化しております。地球の反対側で起きていることですが、希少な野生動物や生態系を保全していくために、皆様に関心をお持ちいただき、ご支援、ご協力をいただければ幸いです。