近藤鉄也さんチリ便り〜第5回〜

2011 年 11 月 21 日 月曜日

まずは、近藤様からいただいた以下のメールをご覧下さい!

「私は動物園での活動が始まりましたが、まだアパートが決まらず落ち着かない日々を過ごしています。
今日は一緒にアパート探しをしてくれているJICAスタッフがペンギンに関する記事が載っている新聞をくれたのでお知らせいたします。

見出しは「多数のペンギンが混獲で死んでいる」で、情報源はアンドレスベジョ大学のAlejandro Simeone氏です。
記事によると、2005年から2010年の間に37件の報告がありその70%が1〜10羽の死亡、24%が11〜100羽の死亡、残りの6%はそれ以上の死亡。チャニャラルからアンクッドまでの1780㎞の広範囲にわたり、多くがバルパライソとコンセプションの間に集中。また全体の54%がマゼランが南から北、遠くはペルーまで移動する3〜6月に集中していると指摘しています。画像にはマゼランが使われていますが、フンボも含まれているようです。

また参考資料として「2009年にはAraucaniaのQueuleの浜で1380個体のマゼランの死体が漂着し混獲の形跡が見られた。」
「IUCNによるとマゼランは50万羽、フンボはチリ国内に35000羽」との記載もありました。

Simeone氏によるとこの報告は氷山の一角にすぎず、漁網の改良が必要とのことでした。
これは以前私が携わっていたウミガメでも同じことが指摘されています。

このような記事を通してチリ国民の関心がより野生生物に向いてくれるといいですね。

近藤」

近藤様、いつも貴重な情報をいただき、ありがとうございます_(._.)_!!1日も早く、よいアパートが見つかることをお祈りしております(^○^)!!最近は、サンチアゴも物価高騰で大変だと伺っておりますが、いかがでしょうか?

さて、お知らせいただいた情報の発信者アレハンドロ・シメオネ博士とは旧知の仲です(^o^)v!!十数年前、チリに初めて出かけ、野生のフンボルトを観察した時に、我々をサポートし様々なご指導をいただいたブラウリオ・アラヤ博士はシメオネ博士の師匠にあたります。

夕食の時に「これが私の愛弟子だ!!」とアラヤ博士から紹介されたことを昨日のように覚えています。シメオネ博士は、長年アラヤ博士のご指導を受け、ペンギン研究と共に、野生の現場での保全活動を実際に担ってこられました。私は、アラヤ博士とシメオネ博士はチリで一番のペンギン研究者だと考えております。

1998年の「チリで開かれたフンボルトペンギン保全国際会議」でも、日本から参加した我々を温かく歓迎し、仲間として共に行動しました。

中でも混獲の問題は、シメオネ博士が、ずっと追い続けてこられた主要なテーマです。チリ沖でのアンチョビ漁をはじめとする各種の漁業活動が、ますます活発になっている現在、混獲の問題は、ペルー〜チリにかけての長大な海岸線や島々に生息する海洋生物や海鳥たちにとって、極めて深刻な問題になってきています。

中国を中心とする国々が、飼料(主に豚用のエサ)として大量のアンチョビを高値で買い漁っている現実は、かつてこのサイトでも、アメリカのボースマ博士が厳しく指摘し警告していることをお伝えした通りです。この傾向は、今後もしばらくは続くと思われます。

ペンギンの保全を推進するということは、自然科学の分野のみに限定されていることではありません。ほとんどの場合、政治や経済に関する、当事国と諸外国との国際的な枠組みの中で、解決の糸口を探らなくてはならないのです。そこには、極めて複雑な国益のぶつかりあいが潜んでいます。また、言葉も生活も文化も価値観までもが違うものたちが、話し合いによって、理性的に問題を考え、絡んだ糸をほぐしていかなければならないのです。

フンボルトのことだけに限っても、私たちが現在のような人間関係、現地の方々との信頼関係、ネットワークをつくるのに、20年以上かかりました。やっとここまできた、というのが実感です。

どうか、あきらめず、焦らず、今後も南米の方々との協力体制をより強固なものにしていく努力を続けましょう!!

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