少し前から、ネット上で映像チェックしている方々の間で、キングペンギンの「黒化個体」が話題になっているそうだ。「黒ペンギン」と呼ぶ場合が多いようなので、ここでも取りあえずそう呼ぶことにしよう。
このサイトでもご紹介した小澤さんをはじめ、何人もの方々から映像や資料・情報をいただいている。本当にありがとうございますm(__)m!!
しかし、これまでは、「色変わり」の一種だろう、と軽く考えていた。たとえば、ロイヤルペンギンはマカロニペンギンの「頬」の部分が白く変色しただけの同種であると考える専門家は、決して少なくない。事実、「頬」の部分が黒でも白でもなく、文字通り「灰色」の個体はたくさんいる。まさにグレイゾーンなのである。
しかし、最近になって、小澤さんからいただいた情報を拝見している内に、「これは注目すべき変化かもしれない」と思うようになってきた。
いくつかの信頼すべき情報源からの断片的なデータを綜合すると、「黒ペンギン現象」は、既に10年以上前から、ある程度継続的に観察され、調査されてきているようだ。その中心人物の1人が、トロント大学の生態学、進化生物学の研究者、アラン・ベイカー博士だ。ネット上に流れている「黒ペンギンの発現率は25万分の1」という数字は、どうもベイカー博士が震源地らしい。
私が、今、一番注目しているのは、サウスジョージア島、セントアンドリュース湾で観察される「全身が黒い個体(とはいっても頸部のオレンジ色の斑紋はあるらしい)」とさらに存在が確認されている「部品的に黒い個体2羽」の関係。さらに、これらがフォークランド諸島で観察される「部分黒化個体」とどのような関係を持っているのか、という2点である。
どうやら、サウスジョージアの個体は、2000年、2006年、2009年、そして2010年と、継続的に観察されているらしい。進化学が専門のベイカー博士が興味を持つのも当然だろう。
ちなみに、過去の「国際ペンギン会議」では、ジェンツーペンギンの形態的変異の可能性について指摘した発表もある。これは、小澤さんのうけうりだが、今年8〜9月にボストンで開催される予定の第7回国際ペンギン会議に、ベイカー博士が参加され、このテーマについて発表して下さると楽しいだろう。
そして、このキングペンギンの形態的変異が、単なる「色変わり」なのか、より深く複雑な、生理学的、生態的、遺伝的要因に起因するものなのかということについて、新たな知見や専門的研究成果が現れ、議論が深まることを期待している。
【2010年4月23日 10:04 追記】
一部の文章を改訂いたしました。
遅いコメントですし、上田先生はご存知かもしれませんが、このサウスジョージア島の黒いキングペンギンの映像を、ナイジェル・マーヴェンの「ペンギン・サファリ」というDVD(2006年制作)で以前見ました。ただし、彼も一度目撃した後、数日後に再度探した時には見つけられなかったと記憶しています。
ヒゲペン 様
いろいろな情報を,ありがとうございます_(._.)_!!実は、コメントはいただいておりませんが、他にも何人かの方々から貴重な情報をいただいております。どうやら、Twitterなどでも、かなり話題になっているようですね。ひょっとしたら、今年8月にボストンで予定されている「国際ペンギン会議」で、何らかの研究、情報が発表されるかもしれません。なにかわかりましたら、また、ご報告致しましょう。